セルフマネジメント


  キャリアコンサルティングにおける相談者のキャリア支援は、組織社会における「セルフマネジメント」を支援することが重要だと捉えています。

 「セルフマネジメント」を自己管理(Self Administration)と捉える向きもありますが、「セルフマネジメント」(Self Management)とは、表記通りの「(組織社会において)周囲と自分自身でうまく処理してやってゆくこと」と考えています。 

 マネジャーのな組織のマネジメントも、「セルフマネジメント」が理解することにより初めて出来るようになるとは思いますが、現実の社会システムはなかなかそのようにもなっていません。その意味からマネジャークラスの「セルフマネジメント」を明確にすることが、マネジメント力を強化し、結果として、彼の所属する組織全体のマネジメント力をも向上し、相談者のキャリアが発達するとともに関わる組織の活性化に貢献する事になると考えています。また、マネジャーになる前でも「セルフマネジメント」力を磨いておくことが大切になります。

 キャリア発達には人生全体の課題解決や役割の変換という視点もありますので、人生全体の「セルフマネジメント」もキャリア発達に内包されます。「セルフマネジメント」をより意識する事により、人生におけるいろいろな役割をうまくマネジメントしてゆけます。

 個人としての「私的課題」と仕事上の「キャリアマネジメント」とをうまくバランスを取りながら処理することが、人生全体のキャリアにおける「セルフマネジメント」となります。


 それでは、「セルフマネジメント」とはどういうものか?ということですが、上記ように、「(広義の組織社会において)自分自身で周囲とうまく課題を処理してやってゆくこと」だということです。

 周囲とうまくやってゆくという点(能率:内部環境の調和)に関しては、M.P.フォレットが指摘しているように、「経験」が異なる他者との遭遇があった場合は「コンフリクション」(軋轢)が大なり小なり発生します。それを「抑圧」や「妥協」ではなく「統合」とういう形で解決する事が「セルフマネジメント」では重要になります。その為には相互に相手の主張を尊重することも大切です。

 個人の他者との関りは「協働作業」(組織化)という面がありますので、それぞれの関りにおいて(協働作業の)「目標」の設定を明確にすることも大切になります。協働作業の「目標」設定を的確に行う為には、自身の「目標」設定が明確であることが当然に大切になってきます。個人としての目標設定の明確化こそ「セルフマネジメント」の基本になります。

「セルフマネジメント」で大切な点は、

1.上位組織・環境である企業への順応(協働体系の維持)=役割期待の確認とその受容能力(有効性:外部環境との調和)

2.上位組織・環境である企業からの離脱=企業からの退職⇒環境を積極的に変えるという選択

 等の選択を主体的におこなうことにあります。(バウンダリーレスキャリア)



 「セルフマネジメント(自主経営)」は、ティール組織でも重要視をされています。ポストモダン時代におけるティール組織を実現する為の重要な要因の一つとされています。

 ポストモダニズムの時代に対応する為には、「キャリアカウンセリング型組織開発」を通じて個々の組織構成員の「セルフマネジメント」を実現・サポートすることが大切になると考えています。

 (参考:ティール組織 フレデリック・ラルー著 鈴木立哉訳 嘉村賢州解説 英治出版株式会社 2018年1月発行)