キャリアカウンセリング(キャリア面談)の進め方


 キャリア面談(キャリアカウンセリング・キャリアコンサルティング)は、環境対応の為のサポートであると考えられます。  組織内でのキャリア面談の環境はその所属する組織ということになります。その組織内(組織開発)におけるキャリア開発面談(カウンセリング)の進め方については、組織の中でうまく対応が出来るようにクライアント自身に「セルフマネジメント」を認識してもらうことが大切になります。その為の動機付け等が不明確だったりする場合は、「キャリアカウンセリング」を通して「セルフアウェアネス」を高め、「セルフマネジメント」が主体的に実現出来るように支援します(※1)。

 職場での悩みなどについては、「キャリアカウンセリング」として傾聴を重視し、サビカスのキャリア構築理論を基本に「ブリーフセラピー」のアイデアも組み合わせながら、課題となっている問題認識の解消を図ってゆきます。また、「セルフマネジメント」に意識を集中することによる充実感(マインドフルネス)を感じられることも大切です。

 基本的な姿勢としては、「組織社会で健全に過ごしてゆくにはどうすれば良いのか」という点に焦点をあてていく形になります。

 「キャリア開発」は、個人の働き方の「未充足ニーズ」を満たしてゆく事でもあると捉えるもが出来ます。その観点からマーケティング理論の「意識マトリックス理論」等の枠組みを意識しながら、幅広く組織社会で活躍できるようなキャリア支援を進めます。

 キャリアやセルフマネジメントについての助言やアドバイスを行うには、キャリアを取巻く環境である「組織」の知識が必要です。その為には、経営学の「経営組織論」や「マネジメント」の考え方を知っておくことが重要になります。

 キャリア面談を通じて組織への働きかけが必要になった場合には、「対話型組織開発」「プロセス・コンサルテーション」を基本とし、個人と組織に双方にメリットのあるように提案を行うことが大切です。 

 キャリア面談はコンサルタントとクライアントの協働作業ですので、一方通行にならずに、来談者の問題構成の明確化を通じて、面談が効果的に進むことに注意を向ける必要があります。

 組織内でのキャリアをしっかりと活かすことにより、個人の社会への環境対応である転職等においても、その組織内のキャリアが活きてくると考えられます。


(※1) このホームページにおける「キャリアカウンセリング」とは、傾聴とリフレクション≪反映≫(JCDAの「経験代謝のメカニズム」)を基本としています。 

 キャリア開発面談には、キャリアコンサティングとキャリアカウンセリングの両方の側面が含まれています。キャリアコンサルティングとキャリアカウンセリングの違いに関する定義の解説は木村先生によるこちらになりますが、ここでも分けて捉えています。(詳しくはこちら)



 キャリア開発面談(キャリアカウンセリング)の進め方の一例は次のようになります。

詳しい内容の説明は別途に研究会にて具体的展開として共有等も行っています。

 基本的には、上記の図を踏まえて、一例として7次のようなイメージでキャリア面談は進めてゆきます。

                           (CC:キャリアコンサルタント・CL:クライアント)

 

「来談目的」:来ようと思った理由。まずはCLが気になっていることを確認。

「主訴」:(将来に向けて)クライアントがなんとかして欲しいと思っている問題(CLが困難を問題として構成している内容)

✖:CCが問題(主訴)を設定(構成)しない。 = CLが自身で言語化し再認識が出来るように支援をする。

「CLの問題」:「困難」をCLが意識化し、「問題」として構成されている認知。

「組立て(見立て)」:主訴を解消する為の手順(CCが立てる見通し)

(主訴を明確化する為の手順《組立①:経験の再現》)

(目標を明確化し、問題を整理する手順《組立②:意味の出現》)

(行動計画を具体化する(問題の解消)手順:《組立③:意味の実現》)

「主訴(問題)の解消」:「目標設定」「行動計画」「行動支援」

     主訴(問題)①を解消する為の行動テーマ(=行動変化)を決め②、CLの行動に移してゆく③。

⇒CLにとって荷物になる場合

⇒CLが重すぎるとのことであれば、主訴の変更へと向かうようにリフレクションを行う(リフレーミング)

 

 


組織内(対話型組織開発)におけるキャリア開発面談の進め方

 

 職業紹介場面や企業内カウンセリング、ジョブカードの面談では、当初から来談者が大きな不安を抱えている事や積極的にキャリアコンサルタントにへ自身の悩みを表明するということも少ないと思います。一方で、相談の背景にメンタル的な問題などが隠されている事もありますので、この対応(リファー)にも注意が必要です。

 (下記の図表にもあるように、ブリーフセラピーの考え方も取り入れながら進めた例になります。[  ]の部分。)

 

☆ここでの来談目的は「キャリア開発面談」や「キャリアに関する相談」を想定しています。

 主訴は、来談者が困っていて解決したい問題の解消なので、これは個々の面談においてCLの問題の構成され方が異なります。

(「経験代謝」の基本:「経験の再現」⇒「意味の出現」⇒「意味の実現」のサイクルも念頭においています) 

  1.  一番に気をつける事は、面談ではクライアントの精神状態を事前に把握することは難しいという前提で対応する点です。もし、通院歴が明らかな場合は医師がなんと言っているのか、就労が可能なのか?。それについてクライアントがどう感じているのかをまず確認するのが当然です。基本的姿勢として一番大切になります。
     キャリアコンサルタントのリファーポイントを踏まえながら、新規のクライアントに対しては、自身のリファー対象であるのかないのかをまず確認しながら接することが大切です。
  2.  インテークではクライアントへの慎重なアプローチが重要です。クライアントの状況を把握できるまでは、クライアントの心を傷つけるかも知れないような過去の経験にいきなり踏み込むことや、精神的なリスクを負うこともあるいわゆる「状況の情報収集」という点に関心を持ち過ぎないことが大切です。
  3.  クライアントの話したい事だけを話してもらうというスタンスを大切にします。
     クライアントの問題を確認し、枠組みとしては問題に沿った経験を語ってもらう事が大切です。その枠組みの中でクライアントが話したい事だけを話してもらうということが大切になります。枠組みを確保しないと、クライアントの話があっちこっちと飛んでしまい、クライアントが相談したい問題自体や問題の改善に辿り着かなく危険性もあります。
     キャリアコンサルタント主導の質問(CCの興味)によって、いきなり無理にクライアントに過去の「経験」を振り返させないように注意します。カウンセリングに必要な情報はクライアントが自ら語るという認識が大切だと思います。
     クライアントが話もしていないのに、見立てとしてカウンセラーの方が主体的に問題を構成するような関りは避けたいものです。
  4.  クライアントが大切に思っている事は、それがどのような経験を経て踏まえて形成されたのかを慎重に聴きます。
     クライアントが問題だと思っている課題(=主訴)、それに付随する経験に注意を集中する必要があります。面談の「組立て」は、クライアントの主訴に応じ設定します。
     クライアントの主訴の変更があって初めて、面談全体の「組立て」も変更するようにします。カウンセラーが勝手に一方的に「組立て」を創るものではないと捉えています。
  5.  面談の状況に応じては、「経験代謝での過去の経験」よりも「意味の実現」の部分である「理想の状態(ありたい自分)」に焦点をあててみるようにします。この視点は認知行動療法的アプローチを使う場合でも役立ちます。
     解決像の明確化によりカウンセリングの枠組みを明確にして上で、クライアントに自由に語ってもらうことが大切です。[SFAアプローチ]
  6.  「悩み」をクライアントが主体的に語る場合は、その「経験」に寄り添い、クライアントの問題構成を明確化します。
     (経験の再現)[MRIアプローチ]⇐[ダブルディスクリプションモデル]
    そうでない場合は、どちらかと言えば「ありたい自分」に焦点をあてて語ってもらいます。
     (意味の実現)[SFAアプローチ] ⇐[ダブルディスクリプションモデル]
  7.  「ありたい自分」(意味の実現)が明確である場合は、その素材となる「経験」を出来る範囲で語ってもらいます。
    (経験の再現⇒意味の出現)[SFAアプローチ」
  8.  良かった「経験」については、クライアントに積極的に語ってもらうようにします。
     (経験の再現)⇒(意味の出現)[Do Moreにつなげます。]
  9.  クライアントが現在「解決」に向かっている点があるのであれば、その点にフォーカスし[Do More]をサポートします。 (意味の実現)[SFAアプローチ」
  10.  クライアントが今「うまく行かない」と思っている時は、語ってもらえる範囲で、そのもととなる「経験」に焦点を合わせてみて、その時の「自己概念」を認識・確認してもらうようにします。(経験の再現)⇒(意味の出現)
      その経験をもとに、内省を促し自己概念の成長を図ります。自己認識のリフレーミングや経験の統合を目指します。
     具体的な「困難」がないのに、「問題」が構成されている場合は、基本的には良循環にあると捉えて、クライアントに自然回復を促す来談者中心療法が基本になってきます。
  11.  合わせて、その逆のうまく行った「経験」が今までになかったかを確認します。(経験の再現)[SFAアプローチ]
  12.  面談を通して、クライアントの「なりたい自分」や「うまく行っていた」時に近づく為の「目標の設定」をサポートします。この流れでうまく行けば「Do More]で「ありたい自分」に、将来にわたり近づいてもらうようにします。
    (意味の実現)
  13.  クライアントの主訴に対しての満足度が高くなるように関わることが大切になります。マインドフルネスの向上が図れるように意識して関わってゆきます。その意味でクライアントの認知と行動計画のブリッジ(橋渡し)が重要です。
  14.  インテークでは、まず相談者の「主訴(問題)」をしっかりと押さえることが大切です。
  15. 「主訴(問題)」が確認出来たら、クライアントの現状とありたい状況のギャップを埋める為の「(意味の出現⇒)目標設定」「行動計画(意味の実現)」「行動支援(意味の実現)」へと支援を進めてゆきます。ここではクライアントの「興味」「能力」「価値観」を共有しながら進めることが大切になります。

 

注:「来談目的」や「主訴」という基本的な語彙も各種団体間で定義が違っていますが、ここではJCDA(CDA養成講座)での定義を基準にしています。

 

☆ブリーフセラピーのダブルディスクリプションモデル


 就労支援における具体的な進め方の1例としては、キャリア構成主義の視点から過去のストリーを確認するという意味で、まず履歴書(職務経歴書)をもとに略歴を確認(構築)します。次にそれをもとにコンサルタントが作成した履歴書(職務経歴書)の形でクライアントの略歴を提示してコンサルタントから見た来談者の略歴を提示します(脱構築)。来談者はそれを参考にしながら、自分で「履歴書(職務経歴書)」を作成(再構築)することにより、新たな「自分」を意識しながら前(目標)に進んでもらう事も出来ます。

 「セルフマネジメント」の支援は、カウンセリング理論でウィリアム・グラッサー(William Glasser 1925~)によって提唱された「現実療法」に近いかも知れません。「現実療法」とは、(クライアントに言い訳を許さず、)人生がコントロールできるものだと感じられるようにすることを目ざします。キャリアコンサルティングでは言い訳等を許しますが、その言い訳について内省を経て再構成(リフレーミング)することが大切になります。この為には「経験代謝のメカニズム(傾聴とリフレクション)」が重要だと考えています。これらにより、人生をコントロールしている状態に戻ってもらうことが出来ます。