Noteで投稿した「ジョブ・クラフティング」についてまとめ直してみました。
ジョブ・クラフティングは、キャリアカウンセリングにおいて何故重要か?
まずは、ジョブクラフティングがキャリアカウンセリングにおいて何故重要かという点を確認しておきたいと思います。
一般的な認識では「キャリアコンサルティング」というと、転職する時や再就職する時に受ける職業を変える為のアドバイスというものが普通かも知れません。これは、ハローワークの職業指導を中心に形成された流れもありますので、やむを得ない面もあります。
しかしながら、キャリアコンサルティングとは自分の幸せに主体的に仕事を選択してゆく「キャリア自立」を目指してゆくものです。ですから、転職などで仕事を変わらなくても、職業を主体的に選べるようにする必要があります。その時にこの「ジョブ・クラフティング」という最近出てきた考え方が大変役に立ちます。
「キャリア」とは?
ジョブ・クラフティングは、キャリアカウンセリングにおいて、すごく重要であるとしましたが、まずはここで言う「キャリア」について少し触れておきたいと思います。
一般的に「キャリア」というと、ビジネスの成功を意味するような感じですが、ちょっと難しい言い方になりますが、ここでは次のような定義になります。
「人が生涯を通じて関わる一連の労働や余暇を含むライフスタイル」
仕事だけでなく余暇も含んだライフスタイルということです。ですから、キャリアコンサルティングはライフスタイルコンサルティング。キャリアカウンセリングはライフスタイルカウンセリングということにもなります。
また、次のような定義も一般的です。
「その人の仕事上の経験が時間とともに経過をしてゆく一連の流れ(自覚的態度と行動)」
一般的なキャリアコンサルティングはこの定義を基に行われることも多いようです。
但し、この定義だと、同じクリーニング店を経験すれば、同じキャリアになるということになりますが、少し違う気もします。
そこで、今はやりの「ジョブ型雇用」を前提とするバウンダリーレス・キャリア(ひとつの企業体に限定しないキャリア)という考え方での次のような定義をご紹介したいと思います。
「スキル、専門知識、人間関係のネットワークに具現化された情報と知識の集積である」
つまり、その人が仕事から得たスキル、専門知識、人間関係に現れたその人の知識や情報量ということになります。
この意味においては、「キャリア」とはその人のそれまでの仕事(ジョブ)から何をその人が得たかという点が大事になってきます。それをしっかりと聴いて相談者自身が改めてその仕事から得てきたものを理解し、認識し直してもらうということが、キャリアカウンセリングにおいては重要となってきます。
ここでのキャリアカウンセリングはこの部分を基本としています。
それでは、次はここでの「キャリアカウンセリング」というものが、どういうことか、どんなことを目指すのかということをもう少し詳しく説明したいと思います。
「キャリアカウンセリング」?「キャリアコンサルティング」?
キャリア支援に関する基本資格となっているのは、国家資格キャリアコンサルタント・2級技能士キャリアコンサルタントとなっています。
あえてここで「キャリアカウンセリング」をメインとしている理由として、「ブリーフ・セラピー」という心理療法を基本においていることがあります。「プラグマティズム」「システム論」「語用論」といった組織にも対応が出来る基本の考え方があることで、組織に関するキャリアを取扱うにはブリーフセラピーはとても適しています。また、解決志向アプローチ(SFA)として、最近は知られてきましたが、あまり原因と自体の究明や解消にこだわらず、将来の解決に向けての認知を変えてゆく手法であるということも相談者に寄り添いながら解決に向けて進めやすくなっている点です。
もちろん、「キャリアコンサルティング」として、職業理解や自己理解も取り扱いますが、メインとしては「キャリアカウンセリング」として、相談者の認知に関わってゆくことで、「キャリア」の定義で出てきた「スキル、専門知識、人間関係のネットワークに具現化された情報と知識の集積である」という相談者の側面をうまく取り扱うことが大切です。
「キャリア自立」ということ
キャリアコンサルティングでは、「キャリア自立」ということが言われます。相談者に直接この表現を伝えることは少ないかも知れませんが、キャリアコンサルティングでは大事にされている概念です。また、「ジョブ・クラフティング」を考える上で参考になりますので、今回は「キャリア自立」について触れておきます。
「キャリア自立」って、何か分かったような分からないです。そもそも仕事=キャリアと捉えると、誰かに強制されて選んでいる訳でもないので、今更改めて「キャリア自立」と言われてもと感じます。
「キャリア自立」とは、「自身の『幸せ』の為に、職業(仕事)を主体的に選択すること」と考えるのが、良いかなと思っています。また、「自分がどうありたいか?」ということも大切ですが、これは自問自答してもなかなか掴めないので、一度キャリアカウンセリングを受けてみることが大切になります。但し、「自分が本当はどうありたいか?=自分の幸せ」という点にフォーカスがされているキャリアカウンセリングが大切です。
「自分がどうありたいか?」、これがキャリアカウンセリングを行う中で大切なことになります。その上で「職業(仕事)を主体的に選択をしてゆく」ということが必要になります。
次は、「自身の『幸せ」の為に職業を主体的に選んでいく」ということと、「ジョブ・クラフティング」との関係性について確認します。
いよいよ本題の「ジョブ・クラフティング」です。
ここまで、「キャリア」「キャリアカウンセリング」「キャリア自立」とクドクドと述べて参りましたが、いよいよ「ジョブ・クラフティング」についてになります。
「ジョブ・クラフティング」をチャットGTPに尋ねると、
「ジョブ・クラフティングとは、従業員が自発的に仕事の内容や範囲を調整し、自分の強みや興味に合わせて仕事を再設計するプロセスです。これにより、個々の役割がより個人的な価値観や目標と一致し、仕事の満足度やパフォーマンスが向上します。
ジョブ・クラフティングは、タスク、関係、認知の3つの側面で行われ、仕事の柔軟性や創造性を高め、組織全体の効果性にも寄与します。」ということです。だいたいあっていると思います。
「タスク・関係・認知」というところだけ、少し詳しく解説をしたいと思います。これはどこかで聞いた話ですが、わかりやすい例としては、テーマパークでの清掃員の話があると思います。
テーマパークの清掃員ですからタスクとしては、来場者に迷惑をなるべくかけずに、施設を清掃することになります。関係としては、来場者となるべく触れ合わない。認知としては目立たない、あまりやりがいのない仕事という感じでしょうか?
ある時この清掃員が人を楽しませる絵を描くことが得意だったので、水を撒くときとか何かの時、遊び心で歩道にイラストを描いてみました。すると、来場者の方も喜び、声をかけられたので、嬉しくなりました。徐々に彼はファンキーな清掃員として有名になり、施設からもお墨付きをもらうことが出来ました。
この変化したタスクは、清掃をしながら来場者を楽しませる。関係は来場者と積極的に触れ合う、認知としては、人を楽しませる役割でやりがいと楽しみのある仕事に変化をしたという感じでしょうか。
このように、同じテーマパークの清掃でも、ジョブ・クラフティングをすることにより、従来よりずっとやりがいのものにすることが出来る。これが「ジョブ・クラフティング」の概念です。少しは感覚的に理解できたでしょうか?
次は、「キャリア」と「ジョブ・クラフティング」の整理と、それゆえの「キャリアカウンセリング」の重要性を確認したいと思います。
「キャリアカウンセリング」の効果
それでは、「ジョブ・クラフティング」について最後に、ここまでのまとめと改めて「キャリアカウンセリング」の有効性について考えてみたいと思います。
キャリアカウンセリングの目的は、相談者の「幸福」や「満足」につながるように主体的に仕事を選べるように(主体的職業選択を)してもらい、より良いライフプランに気づいてもらうことになります。
但し、必ずしも転職として仕事を変えることが必要ではなく、今、目の前にある仕事を如何に自身のキャリアにつなげるという点も大切になります。この場合はその仕事からどんなこと(スキル・知識・人間関係)を得ているのかという視点を持つことが大切になります。
そして今の仕事をより充実させるには、このブログのテーマである「ジョブ・クラフティング」として、自分の今持っている仕事を創り直してゆくことが大切になります。しかし、それが簡単にできるかというとそうではなく、その人がある意味では現状の環境に捉われていることから、一度離れて見つめ直す(俯瞰する)必要があります。
これを一次的変化(シングルループ学習)から、二次的変化(ダブルループ学習)に移行するとも表現をするのですが、これには信頼できる他者と一緒に俯瞰することによって、よりうまく自身をみてゆくことが出来ます。つまり、特にこのような場合に「キャリアカウンセリング」が必要であり、有効であるといえます。
キャリアカウンセラーとの協働システムで、自身の仕事システムがどうなっているかを見つめ、それを見直すことにより、今やっている仕事の「ジョブ・クラフティング」につなげるような取り組みが大切だと考えています。これにより、クライアントをより満足の高い生活(ライフスタイル)につなげることができると思います。