エドガー・シャインの「プロセス・コンサルテーション」の翻訳などをされている尾川先生がOD寺小屋を開催(しかも無料で!)されるということで、第一回目の初日に昨日参加をさせて頂きました。最終的には書籍にされるという事ですので、内容はそちらで確認を頂くとして、その中で聴き手として尾川先生の話から感じた事やその感想などを書き留めておきたいと思います。
第1回:プロティアン・キャリアとボーダーレス・キャリア
キャリア・ドメインの立場から、採用の非対称性を考える
参考書:『これからのキャリア開発と組織社会化』(エドガー・シャイン/尾川丈一/株式会社パーソル総合研究所(著)、(株)プロセス・コンサルテーション、2021)
最初に、基礎になる考え方として、
「多段階心理関数(ODの定義)」 の提示がありました。
『• 個人 R(キャリア選択)=f(S(キャリア・アンカー),E(キャリア・サバイバル))⇒
• 集団 R(チームの成長)=f(S(リーダーの選択・排斥),E(位相変化))⇒
• 組織R(組織開発)=f(S(組織デザイン),E(組織文化)』
今回は、上記の内、個人の部分の考察になります。
尾川先生が課題とされているのは、キャリアコンサルティングが組織内で行われ、それが必然的に組織に影響していくにも関わらず、キャリアコンサルタントは内的な自我に重きを置きすぎているのではないかということだと感じました。
その為もあり「客我」の概念である「キャリアアンカー」が内的な自我として日本では捉えられていることが多い点に違和感があるということです。
支援における不調和の解消の事例として、認知症対応における「見え研式エコマップ」が取り上げられ、キャリアコンサルタントがクライアントの内的成長に関心の重点を置きすぎる為に、他の有効な情報が得られず、結果的に組織内におけるクライアントにとってベストの解決に至っていない可能性も指摘をされていました。この解消の為には、キャリアコンサルティングにおいては「内的キャリア」を重視しますが、やはり「外的キャリア」も視野にもっと入れておく必要があるとのことでした。
「外的キャリア」について、クライアントが周囲から見てどういう期待をされているかという「ジョブ・ロール・マップ・イメージ」の提示がありました。「内的キャリア」と「外的キャリア」の対話やその場所が必要だということでした。
その対話の場として「キャリア・ドメイン」の重要性も指摘されていたように思います。これは神戸大学の平野先生の著作で詳しく解説がされているとのことでした。組織開発・キャリア開発・キャリアコンサルティングは実際は三位一体だと思いますが、これらが横断的に理解が成されていないという課題の提示があったと捉えました。
個人的にはこれらの点について、キャリアコンサルティングにおいて「セルフマネジメント」という視点からの支援を行うことにより、解決に近づくように感じました。今後のOD寺小屋で、ひとつの意見として出してみようと思います。
「セルフ・マネジメント」については、しっかりとして定義づけが必要だと思っていますので、これからのOD寺小屋の学習の中で明確にしてゆきたいと思います。そもそも「マネジメント」自体がなかなかはっきりとした言語化がされていないので、よく熟考する必要があります。
キャリアカウンセリング型組織開発®においては、もう少し具体的に、マネジメントを「組織におけるマーケティングとイノベーションを実現する為の調整とその前提としての外部環境との調整機能」と位置づけをしています。「セルフマネジメント」もこれを前提としながら、個人としての目的を明確にするというのがまずは重要になります。