組織開発では、過去の分析結果などを通じて獲得された「モダン」な「本質主義」的な価値観をベースとしたマインドセット(診断のフェイズがある)にて行う事を「診断型」、社会構成主義をベースとし、ポストモダンな価値観を前提としたマインドセット(診断のフェイズがない)を「対話型」とされています。「診断型」「対話型」どちらが優れているという事でもなく、実務面では行ったり来たりするとの事です。但し、「本質主義」と「社会構成主義」は論理階梯が違うので、両者が交わらることなく、階層を上がったり下がったりするような感覚かも知れません。ただ、自分がどちらのマインドセットで関わっているかは、大切で意識する必要があるとされています。
キャリアコンサルティング等おいても、この「診断型」なのか、「対話型」なのかという点は大切に思われます。
キャリアコンサルタントの養成講座においても、社会構成主義についての説明がされています。そこでは、診断型を論理実証主義的世界観、対話型を構成主義的世界観としてまとめているようですが、実務においては並立できない両者の違いやその為のマインドセットの設定の大切さについては詳しくは触れられていないようです。
それぞれの定義から考えてみると、キャリアコンサルタントは「診断型」(専門家的関り(医師的な関り))が主で、JCDAにおけるキャリアカウンセラーは「対話型」が主のように思われます。
このホームページでも、ブリーフセラピーやプロセスコンサルテーションにも触れていますが、これらは社会構成主義から派生していますので、基本的には「対話型」だと考えます。特に、対話型組織開発で活用をすることを考えると、「診断型」ブリーフセラピーや「診断型」ナラティブ・セラピー等になることは避けたいものです。
しかし、我々は、学校教育・受験制度で、長らく唯一絶対の答えや物事の細分化による真理への到達を主とする「モダン」的な教育を受けて来ましたので、かなり意識していないと我々は「対話型」ではなく、「診断型」のナラティブセラピー、「診断型」ブリーフセラピー等の罠にはまってしまう可能性があります。
この点は、よく注意が必要だなと感じています。
但し、「診断型組織開発」においては、ウォーレンベニスのフローチャートを観てみると、それぞれのステップで「本質主義」と「社会構成主義」(まだ、言語的概念がなかった)が既に入り混じっているようにも捉える事が出来ます。その為、シャインのプロセス・コンサルテーションも、「診断型」から後に「対話型」へと移行しているようにも感じられるのだと思います。
組織開発においては、両者のもともとの大きな違いは、「本質主義」と「社会構成主義」のベースの違いではなく、実は「診断型」はマネジメント(社会的責任に基づく専門職能 byドラッカー)を前提としていて、「対話型組織開発」は組織のマネジメントをあまり前提としない取組みという捉え方もできるような気がしますが、そのような極端な理想形(理念型)の存在も想定しずらいので、やはり組織開発において二分できるものではないという事になります。また、現在の組織開発の概念ではどちらにしろ、「社会的責任に基づく専門職能であるマネジメント」はあまり前提として想定をされていないのかも知れません。逆に、ウォーレンベニスが否定した当初(1967年)に否定した「”まぁまぁ”的リーダーシップ」を前提としているような気がすることもあります。
(参考 組織開発の探求━理論に学び実践に活かす 著者 中原淳+中村和彦 ダイアモンド社(2018年10月) P309より
ODシリーズ1-職場ぐるみ訓練の考え方WGベニス著-高橋達男訳 1971年 P3~5・P23~37 )