企業にも発達モデルがあります。それがグレイナーモデルです。
〇△✖型組織など、これぞ理想の組織というような啓蒙本も出ていますが、実際は組織もその規模や市場の環境に従って、成長してゆきます。
左がその図になりますが、順次解説してゆきましょう。
グレイナー・モデル(Greiner model)
=組織成長の5段階モデル
L.E.Greiner "Evolution and Revolution as Organizations Grow" 1972年
組織成長(organizational growth)は、組織の拡大、つまり、組織メンバーの数をひとつの指標として捉える。
「組織成長のプロセスには、どのような法則性があるのか?」という事です。
1970年代初期のアメリカ企業で実態調査が行われました。
創業⇒(組織成長)⇒(1970年代の)大企業(大規模組織)への変遷が調査をされました。
局面Ⅰ)①創造性(creativity)による成長・発展
☆企業家による強力なリーダーシップの発揮(個人の時代)
公式化(formalization)の程度が低い組織構造(⇐制度化の程度が低い)による運営の限界
組織運営の限界の露呈
⇒❶リーダーシップ(leadership)の危機
局面Ⅱ)②指揮(direction)による成長 (拡大期:集権的組織の時代)
☆ 公式化された集権的職能部門(制)の組織構造の確立による❶の解決
公式的諸制度(会計制度/予算制度/就業規則/・・・・・)
⇒組織の下部単位の自律性の阻害⇔反抗
組織の大規模化⇒トップと現場の距離の拡大+事業の複雑化の拡大(増大)
➡現場の職務担当者の仕事に関する知識>トップの知識⇔意思決定の不明確化
⇒➋自律性(autonomy)の危機
局面Ⅲ)③委譲(delegation)による成長 (分権的組織の時代)
☆大幅な権限移譲(delegation of authority)による➋の解決
意思決定権限の委譲を意味する
⇒組織の下位単位の自由裁量の拡大→分権的事業部制組織
➡組織全体の統合の欠如→統制権の強化⇔対立により統制が難しくなる
⇒➌コントロール(control)の危機
局面Ⅳ)④調整(coordination)による成長 (本社スタッフによる強力な調整機能の時代)
☆分権化された組織単位のグループ化など高度な調整システム(ex事業部制)による➌の解決
強力な本社スタッフの出現
➡組織の硬直化とレッド・テープの弊害の増大(本社vs事業部の対立/ラインvsスタッフの対立)
⇒➍レッド・テープ(red tape)の危機
官僚主義(bureaucratism);お役所仕事/形式主義/杓子定規による危機
局面Ⅴ)⑤協力(collaboration)による成長 (マトリックス組織の時代)
☆組織内の協力の重視
一時的なチーム制やマトリックス組織と言った柔軟な組織構造⇒チームマネジメント
(一時的なチーム制=プロジェクトチーム・タスクホース)
⇒➎新しい危機
以上までが、グレイナーモデルです。
更に以下のようなことも気になります。
➎新しい危機は、革新(innovation)の危機?/意思決定の不明確さの出現?ではないかとも言えます。
すると以降の局面は次のような想定も出来ます。
局面Ⅵ)⑥強力なトップマネジメントによる➎の解決?
(又は、組織間の意思疎通強化による解決)
⇒➏トップマネジメント層の独走?
(又は 事なかれ主義の蔓延?)
局面Ⅶ)⑦ティール組織による➏の解決?????
(ティール組織が機能する為には、個々の構成員が相当しっかりとセルマネジメント(自主経営)が
実現できている必要性があります。)
ティール組織については脱近代主義「ポストモダニズム)の視点から構成されています。
(P542~)
(ティール組織 フレデリック・ラルー著 鈴木立哉訳 嘉村賢州解説 英治出版株式会社 2018年1月発行)
上記のように、組織にも発達モデル(発達段階)があり、それぞれの段階で危機があり、組織内でコンフリクトが発生します。企業・組織の継続的な発展の為には、このコンフリクトの解決がまず重要です。図式的にはグレイナーモデルのように組織は発展する可能性がありますが、その為にはそれぞれの段階での危機(コンフリクト)を鎮めてゆき、次のステップに移るような組織開発を都度行う必要があります。ベンチャー企業では優れた起業家の才能により、当初企業は発展しますが、必ず次の段階に移る必要が出てきます。
それぞれの発達段階における企業の支援を、スムースに行う事もキャリアカウンセリング型組織開発®の目的になりそうです。
組織の構造タイプの歴史的展開
グレイナーモデル⇒企業(組織)成長のプロセスを分解したもの
②集権的職能部門制組織
③分権的事業部制組織
⑤マトリックス組織
(⑦ティール組織)
組織構造と組織行動
組織構造━━━━➔組織行動━━━➔組織成長
(組織図) (構造化)
古典的組織概念 近代的組織概念
古典的組織論 ⇒ 近代的組織論
(Classical Organization Theory) (Modern Organization Theory)
↓
バーナード革命 (Barnard Revolution)
組織の合理性=組織目的が達成される事
(この前提としては、(権限に基づいて)”全ての職務の完全な遂行”がある)
☆組織化(構造化)の原理
1.分化と統合
分化=活動の細分化
統合=意識的調整
2.管理原則と組織化(構造化)の原理
①ライン組織 ⇐経営の一元化
ワンボスシステム
②ファンクショナル組織 ⇐専門家の原則
専門化の原則、複数ボスシステム
③ライン&スタッフ組織 ⇐「命令一元化の原則」+「専門家の原則」の同時実現を目的とする。
長所:命令の統一性+専門化
短所:ライン権限とスタッフ権限の混乱
➔スタッフ優位となる傾向⇒「スタッフ帝国」(テクノストラクチャ)
3、部門編成の原理
①単位的分化=仕事の統一性を保持したまま仕事を分化する形態
分化の基準:地域別・製品別・市場別(顧客別)
②過程的分化=仕事の循環過程の段階によって分化
分化の基準:購買・製造・販売
①②⇒一次的分化
③要素的分化(専門的分化)=仕事を構成する要素によって仕事を分化させる形態⇒2次的分化
経営の要素:人/物/金/技術/情報/広告…
ex:人事部/保全部/経理部/技術部/システム部/宣伝部・・・・・
④部面的分化⇒第3次的分化 =仕事の部面によって仕事を分化する形態
(phase)
管理職能(management functions)の分化
経営の部面;計画━執行(実行)━統制
(planning) (doing) (controlling)
経営学での”統制(controlling)の意味;計画(planning)で設定された目標と実績の比較
評価・差異分析・計画のフィードバック
※現実的には、計画と統制をひとまとめにする場合が多い
執行職能と、計画職能・統制職能の分離
経営の大規模化・環境適応の必要性の増大の為。
理由:計画職能を専門家が遂行することによる専門的知識・機能の活用
各部門の計画や統制に矛盾や重複が生じないようにするための統合化の必要性
第3次分化:全社管理スタッフ/ジェネラルスタッフ部門
計画スタッフ:企画部(室)/計画部/調査部/社長室……
統制スタッフ:管理部(本部)/監査部/……
☆経営(活動)の部面(広義の経営)
⑴目的 (objective, goal, purpose)
⑵理念 (philosophy)
⑶支配 (control, governance)
⑷政策 (policy)
⑸戦略 (strategy)
⑹計画 (planning)
⑺組織 (organization) ⇒ 経営組織論 (Organizational Theory)
⑻調整 (coordinating)
⑼動機づけ (motivating)
⑽統制 (controlling)
⑾作業 (operation)
(人間の諸活動)
(狭義の)経営 (administration)=経営職能 (administrational function)
⑴~⑸
管理 (management)=管理職能 (management function)⇒管理者の役割・任務・仕事
⇒経営管理論 (Management Theory)
⑹~⑽
(2005年 春の講義より)